ガラスと暮らす
ガラスには、水滴のようなやさしい美しさがあります。一方で、カットされた断面は、宝石のようなきらめきがあります。高温で自由に形をつくることができるガラス。そのガラスで作るアクセサリーには、水や氷を身につけるような透明感があり、まるで “自由なかたちの宝石” のようです。
そんなガラスですが、一体どんな素材なのでしょうか。なぜガラスを素材に選んだのか。ガラスでどんなことができるのか。このページではそんな素朴な疑問にお答えしていきます。
ガラスの原料

おもな素材はケイ砂です。ほぼケイ砂だけで構成されるガラスは(石英ガラス)とよばれます。ケイ砂にNa2OやCaOなどが加わったのが(ソーダ石灰ガラス)、PbOが加わると(鉛ガラス)、B2O3が加わると(ボロシリケイトガラス)、となります。日常の中では(ソーダ石灰ガラス)でできた瓶や窓ガラスが多く見られます。
ガラスの不思議
透明の秘密
ガラスは結晶でも液体でもない「非晶質(ひしょうしつ)」と呼ばれる不思議な素材です。金属や氷のような結晶は、原子がきれいに並んでいますが、ガラスは液体がそのまま凍ったような、網目状の並び方をしています。そのため、決まった形の結晶面を持たず、透明で均一な見た目になります。

あめ細工によく似てる?
ガラスは、はっきりとした融点がなく、温めると少しずつ柔らかくなり、最終的に粘り気のある液体になります。柔らかくなることを軟化といい、軟化すると形を自由に変えられるのも特徴の一つです。水あめも同じような性質をもち、食品科学では「糖のガラス状態 “シュガーグラス” 」と呼ばれているそうです。実際にガラスを加工するときの感覚も飴細工とよく似ています。

時間がたつと形が変わる?
「固体だけれど少し液体の名残をもつ」ガラスは、非常に長い時間の中で内部構造がとてもゆっくり変化しているといわれています。ただしこの変化は数十年でppmレベルであり、ガラスの形が変化するには人類の歴史よりも長い時間が必要と推測されていますのでご安心ください。
金属ガラスにおける室温での明確な緩和機構
https://rdcu.be/e6ZkI
Nature Communications volume 14, Article number: 540 (2023)
なぜ割れる?
ガラスは鉄や銅よりも硬く、化学的にもとても安定した素材で、古代ローマのガラス器や数千年前のガラスビーズなどが今でも発見されています。そんな硬いガラスが割れてしまう原因には、非晶質という構造と熱による膨張が関係しています。
非晶質構造による割れ
結晶のように原子が規則正しく並んでいる物質は、原子同士が比較的ずれやすく、力を少し逃がすことができます。ところがガラスは、原子が不規則に固まった「硬い網目構造」をしているため、内部の力をうまく逃がすことができません。そのため亀裂が入ると一気に割れが広がります。
熱膨張による割れ
ガラスは「熱伝導率が低い素材」です。ガラス工芸でガラス棒の先端を熱しても手元が熱くならないのは熱伝導率がとても低いためです。そのため、急な温度変化はガラスの中の温度差を生みます。たとえば冷たいコップに熱湯を入れると、
内側 → 熱くなって膨張する 外側 → 冷たいまま
という状態になります。このとき、ガラスの内部には膨張の差による引っ張りや圧縮の力が生まれ、限界を超えると割れてしまいます。
つまりガラスは、硬い素材である一方、不規則で動きにくい非晶質構造のため、温度差で生まれた力を吸収しにくく、割れやすい素材であるといえます。

割れにくいガラス
古代から使用されてきたガラスは、その長い歴史の中で様々な進化を遂げてきました。その中で実用性をぐっと引き上げたものの一つとして耐熱性の向上があります。熱膨張による割れ がガラスの弱点としてある中で、熱膨張率の低いガラス素材が登場しました。それが酸化ホウ素を含む『ボロシリケイトガラス』 通称 “硬質ガラス” です。耐熱性だけでなく耐薬性にも優れ、フラスコや耐熱ガラスとして使用される素材です。
夜の森硝子は、アクセサリーの素材としてこの『ボロシリケイトガラス』を主に使用しています。普段身に着ける日常使いにぴったりのガラス素材として、長く寄り添う存在になればうれしいです。
便利で豊かなモノがあふれる今、〈役目を終えたモノがどこへ向かうのか〉を考えることも、消費者としてとても大切なことだと考えています。ガラスはケイ砂を主原料とする無機素材で、成分としては砂や岩石と近いものです。また、溶かして再生できる循環可能な素材でもあります。
使い捨てではなく時間を重ねるものとして-‥自然に近い素材であるガラスの魅力を大切に、ものづくりを続けていきたいと思っております。
ガラスで表現する魅力
ガラスは光と透明感を扱える素材であり、他の素材とは異なる表現の幅を持っています。
光をデザインする
木や金属、陶器などは基本的に光を通しませんが、ガラスは光を内部まで通します。色ガラスを重ねたり、内部に気泡や模様を入れたりすることで“光そのものをデザインの一部として扱う表現”が可能です。見る角度や光の当たり方によって印象が変わるのも、ガラスならではですね。
拡大効果
さらにガラスは光を曲げる(屈折させる)性質があります。虫眼鏡のようにガラス内の模様を大きく見せたり、ガラス越しの文字を大きく表現したりできます。
透けているけど存在する
ガラスを造形する際に、『なぜガラスで作るのか』についてよく考えています。ガラスで造形したものは、向こうが透けて見えるので、“形”に透明マントを羽織らせたような…とても不思議な感覚があります。
つるつるとした表面
熱で整えたガラスはまるでやすり掛けしたようなつるっとした肌触りです。
アトリエのある夜の森という場所では、一度に多くが失われた過去もあり、10年前とは全く違う現状があります。塀だけになった住宅地がずらりと並んび、庭石だけが残る家跡もあります。何も知らずに見たら、ミステリーサークルだと思う人もいるかもしれません。

富岡漁港にあったローソク岩は、地震の揺れで倒壊してしまい、私が初めて見たときは根本しか残っていませんでした。ユニークな形だったのでとても残念に思い、ガラスで再現してみました。
今はもうなくなってしまったもの。今日見た景色。言葉にできない感情。『ガラスで形にする』というのも表現の一つだと感じました。
夜の森硝子ではガラスの良さと夜の森の雰囲気をお伝えできるような作品を育てていきます